How can publish a book?

本を出すには、
どうしたらいいのだろう?

本を出すにはどうしたらいいのだろう?

「これ、本にできたらいいのに」。自分のノウハウやアイデア、経歴、取り組みを本にしたい。思いを本として形にして多くの人に知って欲しい。できれば一般の本屋で並ぶような本に。 そう思うことは人生の中のどこかである。でも、どうやって?何より、自費出版と商業出版はどう違うのだろうか?


誰にも聞けない自費出版と商業出版の違いについて

誰のための本?

「本を出せたらいいなとずっと考えているが、商業出版がいいのか、自費出版がいいのか、どちらなのか。そもそも商業として成立するのだろうか?」

出版関係の仕事をしている、と言うとよく聞かれる質問です。最近は様々なサービスが提供されており、自分の思いを形にすることも、ひと昔前よりも身近になってきました。

自費出版と商業出版のひとつの分岐点は、「本の目的」にあると私は考えています。

「自分が言いたいことを伝えたい」のか、「読んでくれる人のためになりたい、喜ぶものを作りたい」のか。

自費出版のメリット

本は、書き手のアイデンティティや思い入れが強く反映されやすいコンテンツのひとつだと言えるでしょう。そのため、プライオリティが「自分が言いたいことを言う(自分のため)」ことにあるのか、「他者にとって有益なものを作りたい(他者のため)」ことにあるのかが、不明瞭になりやすい。特に「本を通じて、読んだ人にこう思われたい」という願望がそこに乗っかると、余計に目的を見失いやすくなります。

「自分の言いたいことが、そのまま他者にも有益なものになってほしい」と誰しも願うところですが、現実的には完全合致するのは難しいと言えます。

自分の思いや考えをただ伝えたい、その結実の形として本にしたい、という場合は、自費出版が向いています。作業手順もコンパクトで済みますし、何より自分が書いたものに対して誰かに手を加えられることはありません。すでに特定のファンがいる場合であれば、自費出版の方が制作コストを下げて売価をコントロールしやすくなるため、利益拡大という観点でも優れていると言えます。

商業出版を成立させる「企画」の下ごしらえ

では、「読んでくれる人のためになりたい、喜ぶものを作りたい」と思ったら商業出版になりうるのか?

商業出版として成立させるためには、さらに次の要素をクリアし、詳細な情報を詰めていく必要があります。ひとつ目のフェーズが【企画・調査】、ふたつ目は【営業】です。

【企画・調査】

  • テーマ選択
  • 書籍化に耐えうる読者ボリュームがあるか
  • 読者ボリュームの数値の論拠
  • 市場傾向の調査、販売方法の特定
  • 市場優位性
  • ペルソナ設定
  • ペルソナに向けて情報を整える
  • ペルソナとのコンタクトポイント
  • 出版企画書として組み立てる
  • コンセプトの明確化

【営業】

  • 編集者に紹介する
  • 決済を取る
  • 印税等の交渉

本記事では【企画・調査】について解説します。

本は書く前こそが肝

本を書くのは大変だ、ということは一般的に知られています。しかし、本を書く前も同様に大変です。もしかすると、書く作業よりも大変かもしれません。

書き手としては「これが言いたい」という気持ちがはやり、時には「(書籍を通じて)こう見られたい」という思いが勝ることも。

しかし、他者に自分の考えやアイデアを商品として売る、ということを考えると、こうした一方的な思いのみでは本として成立しません。

【企画・調査】のフェーズでは自分の発想やアイデアに客観性の光を当てて、商品として成立しうるか検証します。このフェーズは自分の企画を詰めていくプロセスですが、同時に商業出版に耐えうるのか、自分の思いや能力を見つめていくプロセスでもあります。

テーマ選択、読者ボリュームがあるか

何かについて本を書く場合、テーマがあるはずです。そのテーマについて、どれくらいの人がお金を出してでも知りたいと思っているのかを検証します。同じ情報がネットで無料で書かれていないか、または本の形で読んでもらうのが適切なのか、ここで確認しておきましょう。

注意したいのが、「自分がそのテーマについて書きたいから、そのテーマに読者がいることにする」という考え方です。確かに一人の思いや行動により、新しいニーズを掘り起こし、需要が生まれることは稀にあるのですが、確率的には滅多に起こりません。だからこそ、成功した作品は革命的であると言えます。

テーマの需要が見えない状態で商業出版として勝負するのであれば、成功する確率を極限まで高め、リスク回避をしておく必要があるでしょう。他に読者層を取り込めないか検討したり、新奇性だけで購買を誘える販促方法を考えておく必要があります。

読者ボリュームの数値の論拠

お金を出してでも知りたい人が一定数いると仮定した場合、その論拠となった数字は何かを明確にします。例えば、直近で似たコンセプトの本が15万部売れていたら、読者ボリュームは最低でも15万人はいると想定できるでしょう。

直近で類似したテーマを取り扱った書籍がどれだけ売れているのか、また数年、数十年単位で需要があると推測できるのか、現代の社会状況も踏まえて検証します。この検証によって、読者ボリュームが小さすぎると判断されたテーマは、商業出版には向いていないと言えるでしょう。

または、読者ボリュームが小さいテーマを商業出版で扱うならば、①企画の特異性、優位性を高めて少ない需要を取りこぼさないようにする②商業出版ではあるが社会的な意義が大きいのどちらに持っていけるかを検証します。

市場傾向の調査、市場優位性、販売方法の特定

先の項目では読者ボリュームを推測するために、類似したテーマの書籍の売れ行きを確認しましたが、上位カテゴリでの売れ行き傾向も調査する必要があります。例えば、「ビジネスメールで気持ちを伝える」が本のテーマであったとしたら、その上位カテゴリは「ビジネスマナー」に該当するでしょう。

上位カテゴリを確認することで、どういった本が評価されているのか、市場動向が見えてきます。例えば「効率よくメールを返す」本が売れているのであれば、人々が今ビジネスマナーに求めているのは「効率性」であって、短い文章でメールを返せるようになる本の方が需要があるかもしれません。

市場動向から誰がどのような理由でその本を購入しているのか仮説を立て、その仮説において、自分の本が選ばれる優位性があるのか、じっくり検討しましょう。市場動向から大きくズレたテーマであれば、テーマそのものを見直す必要があります。

また、類似テーマおよび上位カテゴリではどんな著者が本を書いているのかを確認します。その著者と比肩して売れると言えるのか、強みはあるのかを確認します。

そして、上位カテゴリで今売れている書籍の売れ方を調査し、自分も同じ販促方法ができるのかを検証します。例えば、エッセイ本を出したい場合、同じカテゴリで売れているのがインフルエンサーの本ばかりであれば、彼らは自分のSNSで宣伝して売っている可能性が高いでしょう。もし自分に固定ファンがいない場合、同じ売り方ができない可能性が高いため、別の販促方法を考える必要があります。

ペルソナ設定、ペルソナに向けて情報を整える、 コンタクトポイントの想定

先の項目で市場動向を調査しました。それを踏まえて、今度は自分の読者ターゲット像を掘り下げてペルソナとして仮定します。そのペルソナが「読みたくなる」「読みやすい」「役に立つ」ように、伝えたい情報の「順序」「伝え方」「見せ方」などを作り直します。

本記事の最初では、「本の目的」とはなにかについて触れました。商業出版であれば、本の目的は「読んでくれる人にとってためになる、喜んでくれる」ことです。相手のためになるためには、相手がいまどんな状況にいるのかをよく知らなくてはいけません。

例えば、毎日の子育てで手一杯の親御さんのためのレシピ本であれば、面倒な下処理なし、パッと見てレシピがわかる構成の方が実用的でしょう。逆に調理法に入るまでの前書きが長かったり、特殊な調味料を使うレシピであれば、実用性が低くなかなか購入にまでは繋がらないかもしれません。

本を通じて「相手に自分のことを知って欲しい」のであれば、「自分も相手のことをよく知る」ことが必要不可欠です。相手の生活像が見えてきたら、どの接点で本を手にとって買ってもらえるか(コンタクトポイント)も見えてくるでしょう。

先の例であれば、子育てで手一杯の親御さんであれば直接本屋に行く暇がないため、手元のスマホで手軽に調べられるインスタグラムなどで事前に発信して認知度を高めるのが良さそうです。他にも子育て情報サイトで連載する手もあるでしょう。

コンセプトの明確化、出版企画書として組み立てる

これらの情報を踏まえて、自分のテーマやコンセプトを見直し、出版企画書としてまとめます。コンセプト、仮タイトル、著者プロフィール、類書の売れ行き、市場動向、読者ターゲット、販促方法、そして目次構成は最低限欲しいところです。この手順を踏むことで「需要がある」「売れる可能性が高い」「この本を出す意義がある」「この本を出す著者として適切である」ことが客観的にわかる出版企画書ができます

「確信」こそがアイデアを現実化させる

小説や漫画などエンタメ性の高い作品、公共性の高いノンフィクション作品などはさらに考える要素が増えるものの、基本的にはどのジャンルの商業出版でも同様に企画・調査が必要になります。商業出版として成立すると言える証左を集めることで、「ぼんやりしたアイデア」を「形にする」のです。

「なんとなく良さそう」なアイデアは多くの人が持っています。しかし、実績がない限り「なんとなく良さそう」なアイデアを評価して、一緒に形にしようとする人はほとんどいません。「なんとなく良さそう」を「確信」に変えるために、企画・調査して出版企画書をまとめる必要があるのです。

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